昭和を代表する"希少な小麦"
- Ryusei

- 5月27日
- 読了時間: 5分
更新日:5月28日
先日5月25日、aniceでも使わせていただいている"有機小麦粉"である"農林61号"の麦畑を見学する機会に恵まれました。普段は有機認証を取得した千葉県産を使用していますが、今回の見学の麦畑はこれからの取得になります。主催のパンラボ代表池田さん、ありがとうございます。
麦畑の黄金色に染まった層が美しく、思わず見惚れていました。風に揺れる麦には風情があり、自然と一体化しそうな気持ちに…。
※”有機”の定義について説明いたします。農林水産省の記載を要約すると、化学肥料や農薬に頼らず、自然の力を活かして環境への負荷を最小限に抑えて生産された農産物や食品ということになります。有機JAS認証を見たことがある方は多いかと思います。”有機”である時点で、無農薬や化学肥料不使用などが含まれています。詳しく農林水産省の公式をご覧ください。(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/index.html#organic-farm )

小麦に触れる際によく考えます。この小麦を栽培する方はどのような人なのか。"生産者"がいなければ自分たちは商品を作ることができない。"素材"が良いからこそ、満足のいく商品を作ることができる。だからこそ、"素材を活かす"ことを意識しています。
なぜ希少なのか
農林61号は昭和を代表する小麦ではありますが、今では希少な小麦に…。理由はいくつかあるようです。
その中の一つは栽培の効率にあります。農家の方々によると、この小麦は背が高くなると倒れやすい。そして、コンバインで駆りにくくなってしまうそう。また、現代を代表する小麦たちと比較すると、病気耐性は低く、天候に品質が左右されやすいとのこと。
話は変わりますが、小麦にも等級が存在します。これの基準の一つに不純物が含まれる割合があるそうです。そこで厄介な植物がありました。カラスノエンドウです。この植物は成長すると麦穂に絡みつくようになります。それらをコンバインで刈り取り小麦にすると、お分かりの通り紛れ込んでしまうのです。カラスノエンドウの豆は黒いので斑点のように見えます。小麦以外のものが入り込んでいるという点で等級が下がってしまうそう。
ではなぜそのような植物が麦畑に存在しているのか。お話によるとお米にとっては肥料として働くため、田んぼに撒くこともしばしば。本来であれば麦畑に紛れ込むことはなさそうですが、台風を原因とする水源の氾濫からカラスノエンドウが麦畑に入り込んでしまったとのこと。この植物は雑草化することもあるようなので、取り除くのに大変時間がかかります。
農林61号を栽培するのに本当に手間と時間がかかっていました。ここに重ねて有機の基準を満たすように栽培。有機のJASマークら取り付けられるようになるまでに時間と費用がかかり、さらに毎年更新のために審査と費用が必要になるのです。埼玉という土地柄、農地によってはインフラ整備が行き届いておらず、麦穂が水源に触れてしまい品質が下がってしまうこともあるようです。




農林61号の麦穂を刈って生麦を一粒いただきました。この状態でも特有の味わいが広がり驚きでした。もちろん香りは少し青さを感じさせますが、味は力強い。そして、ほんのりと甘い。小麦粉を炒ってから製粉をするのも面白いかもしれない、そうと思います。
麦穂を少しいただいたのでお店に飾っておきます。10月もしくは11月に鉢植えで農林61号を試しに栽培をしてみようかと思います。お店に入る際に麦穂があるなんて素敵ですよね。
余談ではありますが、畑を移動している間に池田さんに質問をしたのです。なぜ農林61号は"全粒粉"しかないのか。即答でした。これだけ手間暇かけて育て上げてくれているからこそ、余すことなく使っていきたい、と。全粒粉は小麦100%の量、強力粉は外皮と胚芽を除くため30%ほど少なくなります。強力粉の場合、小麦が100kgあるとしたら30kgは削られてしまう計算ですね。改めて池田さんの小麦愛を感じた瞬間でした。


農林61号のサステナビリティ
サステナビリティの意味は持続可能性。私は農林61号がとても好きです。この先もお店で使い続けられること、食べ続けられることを願わずにはいられません。
私たちに出来ること。それは商品を通して"素材の良さ"を伝えていくことだと考えています。食の合理化が進む中で、農林61号のような小麦の栽培とその栽培方法は少数派かと思います。
病気耐性があり、収穫がしやすく、品質差が少ない。これらの利点を考えますと農家の方々も生活がかかっているため、農業を合理化する方向に進むのも頷けます。一方で、それらが揃っていない場合は、収入が安定しないことや他の作業に手が回すことができないなど、不安定のように思います。そのような条件下であっても農林61号を栽培してくださることに改めて感謝の思いが湧き上がります。
私の理想は、”素材の良さ”が広まることで農林61号へ関心が寄せられること。そして、お取り扱いのお店が増えること。小麦の受注が増えることで生産者の方が一人、二人と増えること。比例して生産量も増加。そのようにして、これから先も長く残っていて欲しい。そう考えています。
主役は”素材たち”
”素材と二人三脚”、”生産者の方々と二人三脚”。素材とその生産者の方々がいなければお店はなりたちません。現場を拝見したことでより一層商品作りに気持ちが入ります。どこまでもaniceにとって主役は素材たちです。現状に満足することなく、素材たちを活かせるように今後も精進させていただきます。
いつも暖かな応援をありがとうございます。養蜂にも伺う機会がありましたので、次はハチミツについてのお話になります。ぜひ読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。



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